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 さてさて、今回はちょっと機械の話。機械の苦手な人にもなるべくわかりやすくお話しますのでお付き合いください。

僕はその昔、ビギナー戦で真ん中より下を走っていたころ、とってもうまくて速い選手の走りを見ては、あの人とおんなじタイミング、量、力で手足の操作をすればおんなじタイムが出せるのに。。。速い選手の手足の動き全てをロボットみたいに自分にインプットして運転できたらいいなー、なんて想像した。でもあるとき、この僕の想像には大きな欠点があることに気がついたのです。

ロボットも含めて機械は、動作を制御するコンピューターや電気回路があるよね。この制御を確立するには入力(インプット)と出力(アウトプット)が必要です。僕の想像の大きな欠点は、アウトプットのことばかりを考えてインプットの重要性をまったく考えていないことなのです。走行前に走り方のデータをインプットして、その通り手足を動かす。これってシーケンス制御なんですよ。ステップ制御とも言いますが、つまりあらかじめ決められた順番と量、力でしか動かないんです。昔の洗濯機みたいなもんですね。洗濯物がなくても、水が入ってなくてもスイッチ入れれば決められた順番と時間で動いて、空っぽの脱水をして終了。ドライビングはこれじゃダメなんです。シーケンス制御じゃなくてフィードバック制御が必要なんです。フィードバック制御とは今の状態をセンサーが感知して、それをインプットにして、次のアウトプットを調節する連続した制御のことです。最新の全自動洗濯機は、洗濯物の量や水の汚れを検出して各工程の適切な時間と強さを調節します。もっと精密な機械になると、これにファジー理論や予測制御が加わります。ドライビングは、このかなり高い工業技術レベル以上のことをしなければなりません。当たり前だよね。

そこで重要なのが高精度なインプットです。インプットから判断してアウトプットを決めるのですから、これがなくっちゃ全てが始まらない。そして、このインプットを検出するのがセンサーです。
ドライビング中に必要なセンサーとインプットは
・視覚センサーで検出する、車速、縁石やパイロンの位置(距離)、自分の位置や向き、路面状況、、、
・聴覚(三半規管)センサーで検出する、前後左右の加速度、旋回の量と速度、エンジン回転数、タイヤの音、、、
・筋肉(触覚)センサーで検出する、前後左右の加速度、手足の動作の方向、量、力、、、

です。これにコースイン直前にインプットする
・コースレイアウト、走行イメージ、コースコンディション、、→(慣熟歩行時にインプットされます)
・スタート合図、、、→(起動スイッチのようなものです)
さらに、あらかじめ経験上インプットされている
・車の挙動傾向やDRY/WET挙動傾向、コース固有の特性、、→(予測制御に使用します)
・スタート手順、シフト操作手順、サイドターン手順、、、→(基本動作データー)
などが加わります。
ドライビング中のセンサーの良し悪しはまさにセンスがあるなしといえます。でも、安心してください。センスは磨けば必ず光ってきます。自転車にはじめて乗ったときは、体の傾きセンサーが鈍いから転倒します。極わずかな車輪と重心のズレを検出できないのです。でも繰り返しトレーニングすれば無意識のうちに精度が向上します。

アウトプットの動作の精度ももちろん鍛えなければなりませんが、これはセンサーを鍛えるよりもはるかに簡単なはずです。正確なセンサーを持っていればすぐに悪い動作の瞬間に気づくわけですから容易に治せるのです。すぐスピンしちゃう人は、カウンターステアーをすることに集中するのではなく、テールスライドセンサーに集中するのです。30cmスライドしてやっと気がつくのではなくて、5cmスライドした瞬間、スライド量とスライド速度を感じて次の瞬間のスライドを予測できるようになれば、勝手に適切なカウンターステアーができるようになります。ホントだよ。
但し、参考までにアウトプットの精度を阻害する要因として、
・緊張、極端な車の挙動(間に合わない)、悪いドライビングポジション、体調不良、、、。
などがあることも覚えておいてください。

上手な人の助手席に乗ったとき、ドライバーの手足の動作を観察する人がいます。私も昔やった記憶があります。それはドライバーのアウトプットばかりを見た過ちです。ほとんど役には立ちません。ブレーキ操作を例に取ると、足元だけを見ていればブレーキを踏んだのがわかるだけです。体中のセンサーを使って、パイロンとの距離、車の位置と速度と向き、タイヤのスライド速度と量、減速の強さとその変化を感じて脳にインプットしてください。

このセンサー(上記太字)を研ぎ澄まし、連続して高精度なデーターを脳にインプットして、初めて正しい手足の動作というアウトプットが決まります。手足の動作が主役になってはいけません。感じることを主役にして練習に励むことをお勧めします。難しいけど常に意識することが大切ですよ。
これをマスターすると、初めてのコースでもベストな走りができるようになります。「コースを見極めるのではなく車を見極める」とはこういうことなのですよ。マスターするまで個人差はあれ結構時間がかかりますが、根気よく続けていれば必ずわかるようになります。ガンバレ!

文系の方々には申し訳ない。計測制御、人間工学に詳しい方々、例えだからツッコミ入れないでね(^^;
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5 「精密機械のようにあれ」 2003年5月25日