Report
 いよいよお待ちかね、セッティングの話です。といっても、実は僕もよくわかっていないのである。仮にもメンテナンスガレージを営んでいて全日本戦を走っているにもかかわらず何たることだと怒られそうだが、正直に打ち明けようと思う。ここで話すセッティングとは基本的なジムカーナのセッティングと、一日でも早く速くなるためのセッティングに対する考え方を教えます。中級上級者の方々にとっては当たり前のことですからさらっと流してください。また、例によって一部の話がFF中心になってしまうがご勘弁願いたい。

 セッティングの目的は限界性能の引き上げと成功率の向上に他ならない。キーワードは「バランス」です。
ジムカーナの基本的セッティングは
@全てが正常に機能していること
Aブレーキの前後バランスとよく効くサイドブレーキ
Bコーナーリング中のグリップバランスとより高い限界性能
以上の3点です。
@は当たり前のことだがこれが結構落とし穴だったりする。壊れているのは論外として、性能がいつの間にやら劣化している場合気がつきにくいものである。例えばエンジンの場合オイル量や汚れ、エアークリーナーの汚れ、バルブクリアランス、点火プラグ、点火時期、コンプレッション測定などちょっとしたメンテナンスや調整で性能を復元できたり向上させたりできるのである。シフト操作のし易さ、フットブレーキやサイドブレーキの効き、アライメントの狂い、異音などもいつも気を配る必要がある。僕の場合エンジン出力はたまにテストすることにしている。方法は20km/h〜100km/hの直線加速タイムを測定してこのタイムが落ちてきたら異常と判断する。パーツを交換したときもその効果の確認のため必ず行う。自分のフィーリングなどは当てにしていないのである。ステアリングのセンターも要注意で、いつもよりセンターがずれていたら1輪以上のアライメントの狂いを疑う。
Aブレーキの前後バランスは非常に重要だ。本番用のタイヤを前後装着した状態で、直線でブレーキを踏んだとき4輪ほぼ同時か若干リアーが先にロックするぐらいを僕は狙っている。但しこれには絶対的な前提条件がある。それはサイドブレーキを引いたときに必ずリアーがロックすることである。直線で40km/h程度で走行しアクセルオフの状態又はクラッチを切った状態でサイドを引いてちゃんと左右がロックするのが望ましい。ブレーキングと同時でなければロックしない場合、それでも上手にやれば本番で何とかなるが難易度は増すし当然リスクは高い。よく効くサイドブレーキ(リアーパッド)をチョイスしてから、それに合わせてフロントブレーキパッドをチョイスする。ノーマルパッドとスポーツパッドがあれば、それぞれ個別に組むのと裏表で双方組み合わせて組むのと合計3通りの効きの調整が可能である。もう1種類別のパッドがあれば実に6通りの調整が可能になる。また、リアーの車高を上げればフットブレーキはリアーよりになるので試してみるのもよい。ちなみに去年まで乗っていたEK9はフロントはノーマルキャリパーにノーマルパッド、リアーはEK4キャリパーにメタルパッド、Pバルブはノーマルだった。
Bコーナーリング中のグリップバランスは、申し訳ないがFFだけに限らせてもらうが、リアーがコーナーリングスピードの主導権を握ってはいけないということ。定常円旋廻から徐々にアクセルを開けていったときリアーが先にスライドするようなグリップバランスでは速く走れない。弱アンダーが基本です。これもブレーキバランスと同様で、フロントのグリップを最大限に引き上げた車高とスプリングを先に決めてからリアーのグリップを調整するのが望ましい。フロントのグリップは定常円のタイム測定やタイヤの減り方が均等かどうかで判断できる。リアーのグリップはスプリングもスタビライザーも弱くすれば限界は低く、逆に硬くしたりスプリングプリロードをかけたりすると限界は上がるのが一般的で、ストロークしないぐらい極端に硬くても限界は下がる。40〜50km/h程度の速度の旋回中にブレーキングによりリアーが振り出せればちょうどよい。但しリアーの振り出す速度が重要で、一気にスピンしてしまってはこれは乗りにくいので、振り出したリアーをブレーキを離したりアクセルONなどで、止めたいときに止められるセッティングが楽に速く走れるのである。サイドターンの旋廻速度はフロントのLSDの効きがよければコーナーリングと同様、リアーをやわらかくよく動くようにしてやれば速くなる。これらを成立させるため僕の去年のEK9のリアー空気圧は3.5Kに設定していた。尚、スプリングのプリロードは前後0mmが基本です。

 以上がジムカーナセッティングの全てです。えっ?そんだけ?とほとんどの方が思ったことでしょう。
いやいやここからが本題です。僕はEF8、EK9、DC2のショックアブソーバーはアジュールさんのスーパーオーリンズを愛用している。これはかなりの優れもので減衰力が20段も調整ができるのだが、僕はこの調整をいじったことがほとんどない!詳しく話すとEF8の当初は色々といじって、番号とタイムや結果を記録していた。でも結局はビギナー戦で下位低迷を繰り返していたのである。その後レポート2に書いたEF8の修行時代に入るのだが、この時期を境に間違いなく一度もダイヤルを調整しなくなった。メーカーが推奨するドライの番数のまま、ウェットだろうがタイヤを変えようが町乗りだろうが一切調整しなかったのである。EK9も現在のDC2も同様であるが、これは当初好みの番数を決めた以降、やはりどこをどう走っても、ウェットでもいつも同じ番数なのである。もちろん特別仕様でもない。その理由は3つある。一つは調整できないビルシュタインを使っている人でも速い人は沢山いるから。もう一つはどのような番数でもポテンシャルを最大限使うことをドライビングの目標にしているから。そして最大の理由は冒頭でも書いたが、番数を一つ二つ変えても今の僕にはわからないからなのである。確かにもったいないことをしているようだし、ショックの製作者が知ったらガッカリするかもしれないがこれが事実なのです。で、佐川選手も全く同じ考え方で、EG6用の標準スーパーオーリンズをそのままDC2に装着し番数をいじくることは今のところ町乗り以外一切ない。スプリングも同様で当初こんなもんだろうと組んだスプリングもスタビライザーもどこを走ろうが変えることなく同じものを使っている。LSDはイニシャル10K〜20Kの範囲で少々乱暴だが踏んで効けばOKと考えている。だから今年第1戦から唯一変えたのはリアータイヤの空気圧のみなのです。こんなことだから全日本チャンピオンになれないのかもしれないが、一応関東チャンピオンにはなれたのである。

 僕がEF8でビギナー戦を走っていたころは、全日本選手は毎回LSDとショックの仕様を変更してコースに合わせてスプリングを変えてるんだろうなと思っていた。実際何人かの全日本選手がそうなのかもしれないが、そうしなくても何とかなるのも事実だし、そうしたからといって何とかなるものでもないのです。明らかに変更すべきと自分が感じたとき、僕ははじめて仕様を変えるように心がけているが今のところ必要性を感じないのです。どこを走ってもポテンシャル使用率100%を維持できるようになったら自然と細かなセッティングができるようになると信じているが、それもまだまだ先のことだとわかっているのである。
とはいうものの、練習で他人の車を運転すると時としてセッティングについてもアドバイスすることがあるが、それは冒頭の僕が考える基本セッティング@ABから外れているからで、改善の必要性を感じているからである。

 僕はサイドターンの立ち上がりで回りすぎて捨てた0.3秒やアプローチでアンダーを出して捨てた0.5秒を、些細なセッティングが救ってくれるとは一度たりとも思ったことがない。ビギナーの方が練習会で朝から些細なセッティングをして、午後にベストタイムが出たセッティングを信じるのは一向に構わないが、ぜひ最後に朝一番のセッティングに戻して走ってほしい。その時ベストタイムと同等のタイムが出た場合、さーあなたは何を信じますか?
些細なセッティングを否定しているのではありませんよ。些細なセッティングを生かせるようなドライビングを目標にしてみてくださいね♪
ご意見、ご感想、ご質問はこちら。
12 「セッティングって何?」 2003年9月2日

スーパーオーリンズの使い方解説

読者からのコメント2