参戦記
 あっという間に最終戦を迎えていた。N車元年をチャンスと思い試しに第1戦モテギに参戦し、確かな手ごたえを感じてしまったため、当初5戦のみの参戦だった予定が結局九州を除く8戦にエントリーしてしまった。経済的な負担や時間的負担に対してほとんど麻痺してしまい、気がつけば全日本戦病に感染してしまった。撤収のときはとても名残惜しく沢山の方々に挨拶して回った。「また来年お会いしましょう!」

(新しい引き出しへの試み)
伏線をたどれば、第2戦キョウセイラウンドで津川選手にこれでもかというほどに打ちのめされたテクニカル区間から始まる。先々週のJAF関東戦のビデオを見ても問題はいまだ解消されずにいた。問題を打開するための具体的な方法を模索する気力や勇気が僕には足りなかった。しかし、それを打開するためのきっかけを以外にも安部選手に与えてもらったのである。安部選手はくしくもキョウセイラウンドN3クラスで鮮烈なるデビューウィンをやってのけ、その後伊那ラウンドでも2勝目を上げたニューヒーローだ。土曜日の朝、安部選手が僕のパドックに来てくれて僕のドライビングやDC2の弱点を非常にわかりやすく単純明快に指摘し、打開策をも教えてくれたのである。とてもありがたいが、今日明日できるわけもなく僕は「じゃー練習して来年やるよ」といったのだが、彼は「ダメだよ。今夜練習すればいいんだよ」とあっさり尻をたたかれてしまった。あまりに当たり前のように言われたため僕もあっさり納得してしまい、土曜日の公開練習からその方法をいきなり試すことに決めた。そして驚くことに本番でも妥協せず2本ともその方法に挑戦したのである。結果は見事に失敗だったが、挑戦したことに後悔はしていない。なぜならその方法でしか優勝する方法はないと僕も確信していたし、また彼の純粋な好意に応えたかったからだ。やはり彼は僕の走りを2本とも見ていてくれた。感謝の気持ちをあらわす方法はいくらでもあるが、僕はその方法を確立して彼に応えようと思う。

(強さとうまさ)
N2クラスは実のところ毎戦3位争いをしているようだった。僕も振り返れば1位より3位を目標に走った方が多いように思い恥ずかしくなる。ところが今回は違う。泣いても笑ってもこれが最後だからなんとしても優勝してみたかった。しかしそんな思いとは全く別の次元で、遥かに強い闘争心を燃やす手負いの獅子がいた。シリーズ7位の矢島選手だ。開幕戦で例に漏れず3位でスタートしたが、その後の成績は伸び悩み7位まで転落した。なんとしてもシリーズ表彰式に出たい、と僕も何度か聞かされていたがその思いはハンパじゃなかった。結局彼がたたき出した1本目のタイムを誰も抜かすことができず、今期初優勝、N2クラス転向後初優勝、何より2強を打ち負かしたのである。誰もなしえなかったことを一番乗りで達成できたのは、上手さではなく強さだった。
N3クラスの大槻選手も同様、柴田選手との壮絶なシリーズ2位争いを全日本初優勝で制した。僕は2本とも手に汗握りながら彼の走りを見ていたが、その走りには上手さをしのぐ強さが感じられた。鈴鹿で2位表彰台にたった大槻選手は写真撮影の際にけっして伸ばさなかった両腕を、今回は表彰台の一番上で誰よりも天高く伸ばしていた。
彼らは今日、誰よりも強かったのだと感じた。おめでとうございます。ありがとうございます。

(感謝の気持ち)
全日本戦で以前から気になっていたことの一つに、S2クラスの中嶋選手の車があった。車椅子で慣熟歩行をする彼の車はいったいどのような改造が施されているのだろうという疑問がいつもあった。今回初めてお話を伺いオレンジ色のMRSを覗き見させてもらったのだが、、、驚いた。改造の詳細は企業秘密?もあるかもしれないので割愛するが、その車は当たり前だが両手だけでジムカーナ走行ができるのである。で、その操作方法を伺って、僕は器用に運転する中嶋選手にひどく感心した。しかし中嶋選手は「僕がすごいのではなくてこの車を作った人のほうがすごいですよ」と言ったのである。彼の横にはその素晴らしい車を作ったメカニックの方が座っていた。ドライバーだけに関心を寄せた僕は頭を小突かれた気持ちになり、恥ずかしく感じた。全日本戦に参加しながら、いまだにドライバーだけのものだと勘違いしていたのではないかな?感謝の気持ちを忘れたら楽しめませんね。

(壮絶なポイント争い)
僕は今までポイントを意識したことはなかった。しかし、正直なところ今年中盤以降は関東戦も全日本戦も意識しないわけにはいかなくなった。正式結果が発表され、各選手がポイントを計算し泣き笑いがあった。鈴鹿で1/1000秒差で2位を逃し、今回2/1000秒差で4位を逃した加藤選手が1ポイント差でシリーズ6位に踏みとどまった。他のクラスの各順位も同様に壮絶な接戦を演じていたに違いない。しかしこのようなことはえてして当事者しか知りえないドラマだ。ギャラリーの大半は走りそのものやその日の結果を見て楽しむものだから、参加者でなければ味わうことのできない特権なのだと思った。「だからジムカーナは面白くてやめられない」と加藤選手は笑顔で話してくれた。

この一年間は本当に多くのことを学べました。場違いかな?と当初思った参戦もそのように思うこと自体が場違いに思えてきました。参加して何を学ぶか、勝負だけに凝り固まると見落としてしまう沢山のお宝を僕はより多く拾い集めることができたと自負しています。だからより上手く走ることができたと思うし、シリーズ3位という思いがけないご褒美をもらえたと思う。来年も楽しく参戦したいと思います。1年間色々教えていただき大変感謝いたします。ありがとうございます。

大会名称 日付 場所 天候 クラス 結果
全日本ジムカーナ
第9戦
2003年9月27〜28日 筑波1000 ドライ N2 4位